卵黄

酔っ払うと天使が縮こまっているのを感じる。容積の減っていくグラスとか「なんでおまえは固いんだろな」と言われた鉄の柱とか、その根本に小さくなった天使がいる。天使はだからこそいまは視線に満ち溢れていて、それはつまりはぼくたちが登ったジャングルジムがむかしは大きかったその意味において、まなざしが(そして名詞が、)落ちてきた意味において。

夜。ぼくは夏の一片とされるだろう。その木漏れの遠のきを止めることなどできはしない。尿石の固まった便器の縁をブラシで擦っているあいだにぼくは二度吐いた。叫んだすぐあとだったので少し喉が痛んだ。丸い痰が出る。

海を見ていること、海たちに見られていること、知らないところにあるほくろがなによりも忌まわしいそのときに、泥土に足は突っ込まれる。かなり臭い。足を水で洗っている最中に陽は昇っていた。友達が写真を撮ってくれたけど案の定写真できちんと笑えていない。ムカデが歩き方を聞かれて死んだ話みたいに、写真を向けられると自分がどう笑っていたかを考えて結局変顔せざるを得なくなる。車の中に入って後部座席で話しているのを聞きながら寝た。

バスケは良い。ドリブルついてるだけでいい。ゴールもいらない。ドリブルついてるだけでいい。おれはドリブルついてるだけでいいので。えー。走るのやだー。新技作るので忙しい。バスケットボールの真ん中についたシミがじっと何者かを見ている。

公園で寝れなくて結局家に帰っている最中、あのまま寝れたらどうなっていたかをかすかに幻視した。きっとこどもの目が見えて、それからその小ささにおののくことだろう。