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ストロングゼロについて知っている二三の事柄

ア、バアバアバ。2009年である。テトラポッドの間に間にを漂うフナムシの光沢が二桁の予感を知らしめて、ハリーポッターはちょうど不死鳥くらい、俺は城跡の上で酒盛りを続けていたはず、スピークムネモシュネ、スピークムネモシュネ。蜂須賀公は盗賊からの成り上がりでこの城を手にしたというが見渡すとそこまでアメリカンドリームらしくなくて、第一小金持ちの多いこの県では誰も労働には着手しない、だってピケティが正しいんだもん。おさがりのママチャリとプージャーで塾帰りの銀チャを襲撃する。ヘッドフォンではなく携帯のスピーカーからシャカシャカ流れるラッドウィンプス。ああ。セブンスターのべたつく口触りを誇らしげに確かめながら橋を渡って二十分弱、川流れの見えるここでは祖父の語ったはだしのゲンよろしき地獄絵図が思い浮かぶ。端から端までを覆い尽くした人の群れとなると烈河増である。なるほど三大河川として数えられるはいいが、夏場には使用済みのゴムが並ぶばかりで、おそらく原付の数台は落ちただろう、初夏を過ぎるともうすぐ、花火の殻がラムサール条約に中指を立てることになる。いや、正確には結ばれなかった。大橋の新設に住民団体は反発したが、そんなものどこ吹く風、なぜなら大塚製薬そして日亜化学の工場に続く大いなる巡礼路が増えるのである。崇めよ、石原さとみを、崇めよ、ポカリスエットを、住民の主食はカロリーメイトであり、われわれの海馬は青色発光ダイオードに啓蒙されている。ゆえにわれわれの精液は甘い。糖尿病全国優勝である。そして、ゆえにわれわれが手にするのは、かつてもそしてこれからも、糖質ゼロ、プリン体ゼロ、ストロングゼロのみであった。
アディダスのエナメルボストンバッグに詰められた百以上の缶にわれわれは戦き、震え、かつてモーセがそうしたように山を登り始める。なぜなら下界には原ポが蔓延るから。朝刊の原付の音と紛らわしくてマジで困った。からついた笑いとも取れる自転車のブレーキの音と軋むサドルの音。前で運転していた人間の顔をもう思い出すことができない。何人いたっけ。誰がいたっけ。いまなにしてるっけ。なんだっけ。なにがよかったっけ。誰がなにをしてなにを言ったっけ。誰がなにをしてなにを言った結果誰がまたなにを言って飲んでまたなにをして誰がしたっけ。なにを飲んだっけ。山道を踏み越え互いの顔が夜に滲ませられていく。もうすぐ誰も誰でもなくなるのがわかったので、目を瞑って階段を登った。