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夢でなし

久々に長い夢を見た、もう書いたので別に書かないけれど、よかった、夢の中で旅行するのはなんとも楽しい、けれど薄暗さがずっとあった、起きても暗いままだった。ビジネスホテルのカーテンの遮光性の高さは、普段日光でレムを阻害されてうううと起きるよりも不快だ。起きたらそのまま夜だったかのような焦りを覚えさせて、カーテンを引っ張って、隙間からホームレスが缶のたくさん入った自転車を引くのや、市営のバスが走るのが見えると、安心して二度寝して、そのまま思った通りになる。大概ビジネスホテルを使うときは部活の遠征や軽い旅行以外にはないので、早々に、十時には部屋を出なければと思うし、パリパリのシーツが体に合わないので寝付けない。父は数年前までホテルマンだったが、実家の俺の部屋は壮絶な様相を呈しており、その度に自らの職業が無下にされているような憤りを覚えていたのだろう、ファミコンひっくり返したり、たまに俺にビンタしたりしていた。お陰でいまも部屋が汚い。掃除なんかしてやるものかという反動形成が大いに作用している。いいえ。自身の単なる怠惰に過ぎません。
ペテルブルクの貧しい青年のような、あるいはリスボンの会計士のような、あるいはブエノスアイレスの詩人のような、そんな夢を見られたら楽しいものだろうか、そこまで書いて、夢のなかの通過地点にリスボンが含まれていたことを思い出して苦笑している。そこにある起き抜けの薄暗さを捨象している間に、何匹か魚が水槽でぷかぷか浮いている。トイレに魚を流す度に、友人の顔が浮かんだり沈んだりするので、尿石ごとブラシで削って、下水にまとめて叩き込んだ。そこから立ち上ってくるすえた臭気が夢と呼ばれるものだ。枕の下に流れる誰かの水音を聞いている。わが部屋に堆積した無数の夢でなしが、恨みがましく押し入れから覗き込んでいるのが見える。