うねり大感謝祭

 軽みを帯びた鳥の息遣いが岩礁の間に間に満ち充ちる。だがここは岩礁ではない。それは息吹の遠のきから推測され、ぼくは耳を欹ててて女の口に横たわっている。右目を。横へ。カーテンのしどろもどろにたゆたう肉体の内臓のはらわたの器官の構成されたところの粒子の一粒一(潰されていく群れ群れ)。同語反復、「ぁ」と漏らすより早く、岩礁の裂け目から流入してくるひかりひかりひかり。光は! ひ、と、が踏み倒した火のことを水は語り続ける、その要請は女の手足のもつれに語られ(ルーズな水音)、催促状のことをきみは閉じられた目や口に語らせ(ルーズな水音)、やがて見える歯は石灰質に変質す、る。そのうすく発光する歯が浮き出してきみの口腔から逃亡する数十秒の間隙さえ与えやしないで回転を続ける回転を回転回転回を回転する、水音。

 ……上昇か下降かの区別の付かない鳥たちに(翼を持たぬものはやがて、)指を向けて水は笑い続ける。水面の中心に浮かび上がる歯。雨が降りしきるころに黒ずむ、虫歯と名指されるが、匿名の歯痛を食らわされる(ゆるやかな溶解。目を塞ぐシーツに生えた黴が昨日の大洪水を物語るひかりひかりひかり、ひだり、めにはえたひ。女の涎がぼくの顔にかかる。うっすらニョキニョキ伸びていく歯で光景が埋まりかけていつ投げたのか忘れた。歯茎が付け足されていく辺りで、指は返済のために縮んでいく。