Aはガンガン晴れおまえの声なんか聞いちゃいない

「あれこれいけるんじゃね?」「いけるっぽいよ」「やるべきだよ」「いやほんとぉ、マジでこのライブにぃ」うんぬん。地下鉄過ぎて粒子が飛び交うああ東京これよ東京って死んだ目で呟く先に幻想し、めーるしーめーる彼女のメールの文面どもが流星群のように降り注ぐ明け方か夜半か知ったことじゃない。知るか。(行く先は小さいハコでした。新宿あたりでGW(承前:がなりわめく)になにやら魑魅魍魎が集まるイベントがあるそうで母親からくすねた金を握りしめおずおず入るとなるほど魑魅魍魎の巣窟で、絶滅危惧種と思しきベルボトムとたばこの煙と不機嫌そうなブスの群れ群れで、わたしは質量そして湿度の高い闇闇闇、いい加減にしろ、もうたくさんだ、吹き飛べ、そのさかしらなペンタトニックとマイナーセブンをやめろ!とっとと照明落ちろ、

声、こえ、むこうえ、向こうへ公園
(メチャクチャ記憶が飛んだ。)

記憶が飛んで起きる度にあの薄くて泥土らしいかなしみを酔いざめの水や煙草やそれらで噛み締めるわけだが、子供の頃練った泥団子を思い出すに(鰻屋の息子の彼がひときわ固いやつを作ったあのやり方だ、太陽に何度も時間を転がして当てて)カッチカチになった泥土は少しくらい殴ってもいっこうに崩れなくて、おれたちは最初は喜びテラスで互いの球体を賛辞したものだったけど置いてるうちにだんだん鬱陶しくなって、あの球体がなんか均等すぎていらいらして、けれど鰻屋の息子製法で固められた泥団子はほんとに完璧な球体で硬度を放っていて壁に叩きつけまくったのに一向に壊れず、おれたちは遂に嫌いなやつの顔面にそれを投げたらもはやそいつは石になっていて発狂する保母とやつの親に顔面を何度もビンタされながらそれらをぜんぶ没収された、一個だけくすねてまだあるそれを眺めて壁にぶん投げる午後は鈍い音の広がる空間で破裂音はいっさい鳴らないのだ、ほんとうにむかつく、むかつく、く、あ、かといって完全無欠に固められた泥団子を完全無欠に固めたのは自分だというその事実そう事実を突きつけられてしまうとどうにもうずくまるかぶん投げるかうるさいと怒鳴るかそれでも泥団子は一向に崩れなくてアア泥団子のくせにって何度も何度もうずくまったりぶん投げたり怒鳴ったりを返す返す夕暮れだから渡り鳥も帰ってくるしお家に帰らなきゃと財布漁れば鍵はないしなくしたのはやっぱりおれでトボトボ地下鉄の沿線を歩いていたらたぶんこれは約束されていたのだろう夜の湿度を孕んで重くなったあのいくつもの泥弾がさんざんにダカダカダカダカファンファーレを立ててある人には救いである人には火だろう泥団子を爪に挟んだ渡り鳥たちの頭がふたつに生えて熾に輝く目と翼を持っていてその度にアア泥団子さえ作らなければ泥団子さえとおれは思うのだけどお家に帰れないし公園に行ってあの鳥たちを落とすために泥団子を作るしかなくて渡り鳥の責め苦から逃げ出して公園に向かうしかなくて着いて見るとやっぱりそうだった砂場のあたりで地に生えた草花に鼻を押し付けている子供は鰻屋の息子でおれはすべてわかった。